哲也昆虫記 ~ファーブルになりたかった少年~ ⑨哲也とカブトムシ その3
カブトムシのオスとメス、コクワガタのメス、ノコギリクワガタのオスの4頭が虫かごに入った。
こんなにぎやかな状態は初めてだった。
毎日、見るのが楽しい。
ただ、やはりカブトムシが強く、クワガタたちはえさ場から追いやられ、肩身の狭い感じだった。
しかし、小さな哲也にはそんなところに気遣うこともなく
毎日エサやったり、ときどき手に乗せて楽しんだりした。
ある日、保育園から帰ると、カブトムシのオスとメスが止まり木で交尾していた。
図鑑でこれが交尾であることは知っていた。
そこで哲也は考えた。
もしかしてこれって卵産むんじゃないのか!?
図鑑や本を読み返し、カブトムシの産卵について再確認した。
交尾したあとにメスが卵を産むのは間違いない様だ。
ただ、この状態で産卵ができるのか?
という問題があるのだが、若干3才ほどの哲也がそんなことを考えはしない。
交尾したから産むものだと思っていた。
ただ、図鑑の最後にある「カブトムシの飼い方」というページを見ると
カブトムシのオスとメスを1頭ずつ入れて、ほかのカブトムシやほかの虫を入れないと書いてあった。
ケンカなどをして、産卵がうまくいかないらしい。
それを父に言うと、もう一つ虫かごを用意してくれるという。
知り合いの家で、もう子供が大きくなり、虫かごがいらなくなったらしい。
というわけで、父はその虫かごをもらってきてくれた。
その虫かごは、もともと持ってるものより少し大きかった。
哲也はこれまでの虫かごにクワガタたちを残し
大きな虫かごにカブトムシのつがいを入れた。
その日の夜、やけに騒がしいと思ったら、また交尾していた。
これならうまくいく!
哲也はそう思った。